スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
私たちは数日の間、この旅館周辺でゆっくりと時を過ごした。
途中、部屋についている露天風呂ならば水着着用での入浴も可能だと聞いた啓一郎さんと混浴することとなったが、それ以外は至って平凡な日々。
だた────結局のところ一度も身体の関係を持つことはなかった。
キスはしたものの、それ以降の進展はない。
私はがっかりするとともに、安心している面もあった。
昔からバレエ一筋だったためろくな恋愛経験もなく、唯一の経験は学生の頃何度か異性に告白されたことだけだ。
それも夢に専念するためにすべて断っていた。
啓一郎さんはどう考えても恋愛経験豊富な人種だろう。普段の私に対する振る舞いや、細かいところにも気がつく姿に感嘆させられる。
恋愛経験皆無の私は当然のように処女である。異性と演技でなく手を繋いだのもキスの経験も啓一郎さんが初めてだ。
その度に心臓は爆発しそうになり、顔はゆでだこのように真っ赤に染まってしまう。
世の女性たちはどうしてかっこいい男性を前に平静でいられるのだろうか。
私は一人思い悩んでいた。
そういえばと啓一郎が言っていたことを思い出す。
『気持ちがついてくるまで待ってる』と。