スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
私は啓一郎さんを待たせすぎているのだろう。
だが同時にやんわりとした拒絶もされている。
男性はそういうものを処理しなければならないと友人から聞いたこともあるが、そんな素振りは全く見せない。
いつか溜まりすぎて爆発してしまうのではないだろうか、と私は思い悩む。
旅行も終盤、今はすでに部屋の持ち物を纏めている。
もやもやとした気持ちで鞄に荷物を詰めていると、啓一郎さんの方から声をかけてきた。
「紗雪、そういえばこの旅行中に話そうと思ってたんだけど」
「……ど、どうしたんですか?」
私は若干挙動不審になりながら問いかける。
すると「少しお願いが」と啓一郎さん。
もしかして私がさっき考えていたこと────ついにエッチな頼みがくるかと一人顔を赤らめる。
冷静に考えれば完全なる私の妄想だとわかるのだが、それでも乙女心は加速する。
そういえば啓一郎さんは私と混浴したがっていた。わざわざ水着を旅館の人に頼んでまで。
脳内の妄想にあわあわとしている私を尻目に啓一郎さんは言った。
「1週間後に若手医師たちのための懇親会があるんだけど──そこに一緒に出席して欲しいんだ。もちろん俺の妻として」
私ははっと現実に戻り、啓一郎さんに目を向けた。
「…………懇親会?」
啓一郎さんは「そう、懇親会」とオオム返しをする。私は気が抜けたように「はい」と伝えるのだった。