スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
啓一郎さんがベッドに腰を下ろす気配を感じる。それでも私はシーツから出ることが出来なかった。
ドレスからバスローブに着替えさせたのもおそらく啓一郎だろう。
すべて見られてしまった。
恥ずかしくて死にたい思いだった。
「紗雪……もしかして、嫌だった? 俺、嫌われちゃったかな……」
寂しげな声にちくりと胸が痛む。
私は腹を決めてシーツから顔を出した。
「……嫌じゃ、なかったです。私……ああいうの初めてで……ちょっと……だいぶ恥ずかしくて」
その言葉に啓一郎さんは息を呑む。
なぜかひどく驚いているようだった。
「啓一郎、さん?」
「ほんと?」
真剣な面持ちの啓一郎さんに対し混乱した私は「え?」と返す。
「紗雪って……ああいうことする人今までいたことなかったの?」
そういうことか、と納得する。
たしかに23歳になってまで処女を守り続けていたと言われれば今どき誰だって驚くだろう。
もしかして処女は重かったのかと、私は落ち込みかける。
羞恥と劣等感を抱きながら頷く私に啓一郎さんは──。
いきなり私を抱きしめた。
そして声色高く耳元で話す。
「嬉しい。紗雪の初めてが俺って、生まれてこのかた一番嬉しいかも」
「そんな……重くないですか?」
「重いなんて! こんな可愛い紗雪の初めてなんて……逆に光栄だよ」
啓一郎さんは本当に嬉しそうだった。
私もすでに引け目は感じなくなり、安堵を覚える。けれど、腕の中で思った。
────昨日の最後の言葉。
『ごめんね』
私の意識が完全になくなる寸前、啓一郎さんはそう言っていた。
それが一体なにに対しての謝罪なのか。
そしてなにより、昨日は結局最後までしなかった。