スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 長谷川くんの紹介で私は彼の所属するバレエ団の見学へと向かう。
 今日はその日だった。
 約束の時間は午後3時。

 直接バレエ団の建物の前に来て欲しいと言われた。

「センパイ、お待たせしました」

「ううん、私も今来たとこ」

 タクシーを利用してきた私が先に到着したようで。
 
「それにしてもかなり大きい建物だね。看板も来る途中に何個もあったし、すぐわかったよ」

「よかった。歴史は古いわけじゃないですけど、今、日本の中でもかなり勢いのあるバレエ団なんで。建物もつい2年ほど前に改築したんすよ」

 長谷川くんの言葉に相槌をうつ。
 そしてそのままバレエ団の講師の方や事務員の方々に挨拶をし、建物の中へと入った。
 
 どうやら今日は紹介して本人である長谷川くんが案内してくれるようだ。
 話を聞くと長谷川くんはこのバレエ団の中でもトップまではいかずともかなりいい役どころをもらっている期待の新人だそうだ。

 私の三つしか変わらない二十歳になったばかりなのにここまで実力のある新人はそういないと講師の方々も褒めていた。
 それを聞いていても隣に立つ長谷川くんはクールに受け流しており、相変わらずだなと内心笑う。

 彼は淡白そうに見えて、昔から実はかなりの努力家だった。一緒のスクールに通っていた頃から誰よりも練習場に早く到着し、誰よりも遅く帰る。
 オーバーワークになるよと言われてようやく練習をやめるほど、心の内は情熱的なのだ。
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