スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 鋭い指摘にグッと喉を鳴らす。
 あの短時間でよくそこまで見抜けたなと感心していると、長谷川くんは続けた。

「さっきの言葉──旦那さんのこと好きなんかじゃないって言ってたとき、もしかしてセンパイってまだ好きだって伝えてなかったのかなって思ったんですが当たりですか?」

「……今日はやけに饒舌だね?」

「色々吹っ切れたんで」

 バレバレなことを憎々しく思いながら、私は啓一郎さんのことを思い浮かべた。

 いつも『可愛い』と言って甘やかしてくれる素敵な旦那様は一度も『好き』だと言ってくれたことはない。
 考えれば私のことなど好きではないかもしれないのだ。

 だから好きになってくれるまで待つ?
 それから私も好きだと言う?

 ……そんなんではいつまで経っても気持ちを伝えることができず、永遠にもやもやした心を持て余し続けなければならないかもしれない。

 それではダメだ。
 だとしたらどうするか。

 今さっき告白してきた目の前の相手を見る私はその言葉に勇気づけられたのだ。であれば私も。
 
 ──今日、私は啓一郎さんに好きだと伝えよう。

 そう決めて拳を強く握り締めた。
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