スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 そう言って私は瞼をぎゅっと閉じた。
 恥ずかしすぎて啓一郎さんの顔を見ることができなかった。

 人生初めての告白で、こんなに心細い気持ちになるなんて思いもしなかった。
 じっと反応を待つ。
 だが、啓一郎さんは一切なにも言わない。
 私はおそるおそる閉じていた瞳を開こうとしたそのとき────。


「ごめん」


 呟きが聞こえ、私はゆっくり目を開ける。
 いま、私は謝られた。

 どうして。
 一体なにを。

 動揺し、繋いでいた手が離れる。
 啓一郎さんの手は先ほどとは比べ物にならないほど力が入っていなかった。

「啓一郎さん……ごめんって……」

「すまない…………俺、は────」

 謝る啓一郎さんの顔に視線を送る。
 なにも考えられなかった。
 
 啓一郎さんはその美貌を青ざめさせている。
 沈黙が部屋を満たしていた。

 ほろりと何かがこぼれ落ち、私の太ももを濡らす。自身の顔に触れると頬が濡れていた。

 「……っ」

 私を見る啓一郎さんは息を呑み、顔を歪めた。
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