スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「啓一郎が一体何に悩んでるのか分からんけどさ。お前、自分のことあんまり喋らないし。でも一つだけ言えるのは、人を救えるのは人しかいないってことだ」

「人を救えるのは人しかいない……」

「そうそう! まあだからその悩みを全部奥方にぶちまければいいって話。一人で悩むより二人で悩んだ方がいいって話だ。……そんなことも分からないなんて、啓一郎って意外とコミュ障なんだな!」

 熊沢はそう言ってガキ大将のように大口を開けて笑い、憂愁の漂う俺の背中を叩いた。

 小さく「俺だって色々あったけど、今は前向きに頑張ってるから、お前も頑張れよ」と少し遠い目をする熊沢に一瞬驚く。

 俺は瞼を閉じて紗雪の微笑む顔を思い出した。

「…………たしかに……そう、だよな。熊沢にアドバイス貰うなんて、天変地異でも起きるかもしれないな」

 そう言って以前のように笑いあう。
 第三者目線での意見を聞いたおかげで少しだけ光明が見えた気がする。少しだけ冷静になれた。
 今まで俺はどうして紗雪にすべて打ち明けなかったのかと今更ながら後悔する。

 俺はハッピーエンドが好きなんだ。
 だから紗雪と会って話そう。

 そう決めて新しくバーテンダーの出したスコッチを口に入れた。
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