スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「ステファニアさん、本当にこの数日お世話になりました。ありがとうございました。このお礼は必ずいつかします!」

「そんな気にしないで! 元気になってくれて本当によかった。もしまた何かあれば、頼ってちょうだい」

 私はステファニアさんに手を振り、啓一郎さんの元へと走る。

 今度こそ、ちゃんと向き合おう。


「啓一郎さん」

「……っ紗雪!」

 私の声を聞いた啓一郎さんは一瞬の驚愕のあと、真剣な顔つきで私の名前を呼ぶ。 

 心臓がばくばくと高鳴り、自分が緊張しているのだと自覚する。

「迎えに来てくれたんですね」

「もちろんだ。ごめん紗雪。俺、言葉が足りなかった。もっときちんと全部伝えていれば、紗雪を傷つけることも風邪を引かせることもなかったのに」

「風邪引いてたこと知っていたんですね」

 雨に濡れて風邪を引いただなんて、まるで子供のようで。私は少しだけ気恥ずかしくなり顔を俯かせた。

「熊沢から聞いたんだ。ねえ紗雪、本当に申し訳なかった。謝った理由も全部話すから──だから、俺の話を聞いてほしい」

「はい、聞かせてください。私も……逃げたりしてすみませんでした。昨日も一昨日もずっと車でここに通ってきてくれていたんですよね」

 そう言うと、啓一郎さんは気まずげに頭をかいた。ぼそりと「ストーカーみたいで気持ち悪かったか」と呟いたのを聞いて、なんだか顔が緩んだ。

 私が「そんなことないですよ」と答えると、曖昧に微笑んだところがなんだかおかしかった。

 そして私たちはそのまま啓一郎さんの車に乗り込み、自宅へと向かった。
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