スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「あのとき謝ったのは、酔ってる紗雪に酷いことしちゃったって後悔したから。正気じゃないって分かってたのに、紗雪があんまりにも可愛すぎて抑えきれなくなった自分が恥ずかしくてさ」

「そ、それじゃあ、最後までしない理由は?」
 
 質問の答えに羞恥心を感じた私はもう一つの疑問をぶつける。
 絶対に今、自分の顔は真っ赤だろう。

「それはさ……紗雪にプロポーズしたときって、ある弱っているところに漬け込んで無理矢理って感じだったからさ。俺、ずっと罪悪感があって……紗雪の人生歪めちゃったかなって」

「歪めてなんて──」

「それに紗雪に会う前まではいろんな女と……その……寝てきてたから。抱いたら紗雪のこと穢すんじゃないかって思ったんだ。紗雪は俺の……天使だから」

 以前、私の足に触れながら『天使の足』だと言われたことがあったが、何かの比喩なのかとずっと思っていた。
 天使のように軽やかだったとか、そんな感じのものを想像していた。

 だが、啓一郎さんにとって私は『天使』なのだと言う。
 海外で長く生活していたせいか、流れるように口にする啓一郎さんに私は顔を赤らめる。
 まるで恋愛小説のセリフのような言葉に胸が苦しくなる。

 こんなに真正面から言われてどうすれば平静でいられるのか、誰か教えてほしかった。
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