スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 心が通じ合った日の晩。
 私はお風呂から上がり、そわそわとしていた。

 啓一郎さんは私を愛している故に、抱いてくれなかったということ。
 つまり一方通行の思いをぶつけるとことに躊躇いがあったということで。

 お互いの腹の中を晒しあったいま、私たちの繋がりを邪魔するものはないわけだ。

「髪の毛も言われる前に乾かしたし、それから隅々まで洗ったし、歯磨きもした。それから……」

「どうした紗雪?」

 突然名前を呼ばれ驚いた私は「け、け、啓一郎さんっ」と過剰な反応をしてしまい赤面する。

 どうしても意識しないわけにはいかなかった。
 まして私は最後までするのは初めてなわけで。

 最初は痛いと聞くがどうなのか、でもホテルでの時は気持ち良すぎて頭がどうにかなってしまいそうだったと考え、恥ずかしすぎて悶え苦しむ。

 とりあえず冷静にと言い聞かせ、私は口を開いた。

「お風呂、上がったの? あ、アイス食べる? それとも映画でも──」

「ねえ、紗雪」

 突如引き寄せられ、腰を抱かれる。囁かれた名前は危険な甘さを含んでいた。

 私はいきなりのことに反応できず、ただならぬ空気に体を強張らせた。
 啓一郎さんはそんな私にリラックスさせようと思ってか頭を撫でる。

 少しずつ体の強張りが薄れてきた矢先、啓一郎さんは耳元で囁いた。

「今日、紗雪のこと抱くから」

「……っ!?!?」

 短くても刺激的すぎる言葉に放心状態になる私をソファに座らせ、啓一郎さんはリビングを出ていった。
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