スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
急に声をかけられ、私は振り返る。
そこには若手医師の交流の場にもいた、私のことをねっとりとした粘ついた目で見てきた男────梅本が立っていた。
梅本は馴れ馴れしく近づき顔を覗き込んだあと、私の肩をぽんぽん叩く。
その馴れ馴れしさに鳥肌が立った。
「やっぱり奥さんだ。確か名前は……」
「…………えっと……紗雪、です」
そう言うと梅本は「そう紗雪さんだ」と言って余計に距離を縮めてきた。
啓一郎さんの梅本には近づくなという言葉が脳裏をよぎるが、同時にこの人は大学病院の偉い人を父親に持っているということも思い出す。
医者にも横の繋がりというのは大切だと聞く。
父親が大学病院の偉い人間ということは、もしかして啓一郎さんの所属する病院との関わりも深いかもしれない。
これこら啓一郎さんの出世や立場にも影響するかもしれないと考えると、無碍にはできないと考えてしまった。
「紗雪さんは今日一人なの?」
初対面のときは啓一郎さんが場が場であったために敬語で話しかけてきていたが、今はまるで昔からの知り合いのように話しかけてきて戸惑いを隠せなかった。
私はいまだ肩に触れてくる梅本に体を強張らせながら、曖昧な笑顔で頷く。
「啓一郎さんは今、新薬の研究発表? ……学会でしたっけ、それに参加するために関西の方へ行っていまして……」
「へー、相変わらず真面目だな」
まるで話には興味がないのか、相槌を打ちながらも全身を舐るような視線を感じる。
「紗雪さんってほんとスタイルいいよね。顔も儚げで美人だし。俺、実の所初めて会ったときめっちゃ綺麗な人だなって思ったんだ」
「はぁ、そうですか……」
「だからさ、蓮見先生の奥さんだって聞いてめちゃくちゃ残念だったんだよな。せっかくタイプの人が目の前に現れたのに他の人のものだったなんて」
口ではそう言ってても顔は少しも残念そうには見えない様子に気持ち悪さを感じる。
どちらかと言えば品物を見定めるような目つきをしており、仮にも知り合いの人妻に向けるような視線ではないと心の奥で思った。
「……紗雪さん、今日は何できたの? 車? それとも歩きかな?」
「えっと……バスと電車で」
「それじゃあさ、よければ俺の車に乗ってかない? その荷物結構多そうだし、持って帰るのも一苦労でしょ? 乗ってけばそんな苦労なんてしなくてもいいし、一石二鳥じゃない?」
下心が満載の誘い文句に対し、流石に断るべきだと思った私は冷や汗をかきながら口を開いた。
そこには若手医師の交流の場にもいた、私のことをねっとりとした粘ついた目で見てきた男────梅本が立っていた。
梅本は馴れ馴れしく近づき顔を覗き込んだあと、私の肩をぽんぽん叩く。
その馴れ馴れしさに鳥肌が立った。
「やっぱり奥さんだ。確か名前は……」
「…………えっと……紗雪、です」
そう言うと梅本は「そう紗雪さんだ」と言って余計に距離を縮めてきた。
啓一郎さんの梅本には近づくなという言葉が脳裏をよぎるが、同時にこの人は大学病院の偉い人を父親に持っているということも思い出す。
医者にも横の繋がりというのは大切だと聞く。
父親が大学病院の偉い人間ということは、もしかして啓一郎さんの所属する病院との関わりも深いかもしれない。
これこら啓一郎さんの出世や立場にも影響するかもしれないと考えると、無碍にはできないと考えてしまった。
「紗雪さんは今日一人なの?」
初対面のときは啓一郎さんが場が場であったために敬語で話しかけてきていたが、今はまるで昔からの知り合いのように話しかけてきて戸惑いを隠せなかった。
私はいまだ肩に触れてくる梅本に体を強張らせながら、曖昧な笑顔で頷く。
「啓一郎さんは今、新薬の研究発表? ……学会でしたっけ、それに参加するために関西の方へ行っていまして……」
「へー、相変わらず真面目だな」
まるで話には興味がないのか、相槌を打ちながらも全身を舐るような視線を感じる。
「紗雪さんってほんとスタイルいいよね。顔も儚げで美人だし。俺、実の所初めて会ったときめっちゃ綺麗な人だなって思ったんだ」
「はぁ、そうですか……」
「だからさ、蓮見先生の奥さんだって聞いてめちゃくちゃ残念だったんだよな。せっかくタイプの人が目の前に現れたのに他の人のものだったなんて」
口ではそう言ってても顔は少しも残念そうには見えない様子に気持ち悪さを感じる。
どちらかと言えば品物を見定めるような目つきをしており、仮にも知り合いの人妻に向けるような視線ではないと心の奥で思った。
「……紗雪さん、今日は何できたの? 車? それとも歩きかな?」
「えっと……バスと電車で」
「それじゃあさ、よければ俺の車に乗ってかない? その荷物結構多そうだし、持って帰るのも一苦労でしょ? 乗ってけばそんな苦労なんてしなくてもいいし、一石二鳥じゃない?」
下心が満載の誘い文句に対し、流石に断るべきだと思った私は冷や汗をかきながら口を開いた。