スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「お前だれだ?」

「センパイが嫌がってます。だから離れてください」

 鋭い視線を送る長谷川くんに梅本は嘲るような眼差しを向ける。
 それを感じ取った長谷川くんはより睨みをきかせると、梅本は少しだけ怯んだ。
 長谷川くんは元々顔が強面気味であり、多くのピアスや長めの茶髪という見た目であるためよく人から避けられると嘆いていたことがあったが、運良くそれが効いているようだ。

「センパイから……離れろって言ってるのが聞こえないのか?」

「ゔぅっ!」

 私の腰に回した手を長谷川くんは容易く捻り上げ、痛みで梅本はうめき声を上げた。

「こんなことしてただで済むと思うのか?」

「逆に嫌がる女性を連れ去ろうとするなんて警察に知られてただで済むと思うんですか? なんなら今すぐ通報しましょうか」

 怯むことなく答える長谷川くんに分が悪いと感じたのか、梅本は大きく舌打ちをする。

 そして私に卑しい視線を向けて「邪魔が入ったので、またどこかで会おう」と言い残し、去っていった。

「は、長谷川くん……本当にありがとう」
  
 震えそうな声を押し殺し、私は頭を下げる。
 長谷川くんは梅本の後ろ姿を睨みつけたあと、私の方に視線を向けて「気にしないでください」と言う。

 相変わらずのクールな無表情だったが、いつも通りの長谷川くんで。
 私はようやく落ち着くことができた。
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