スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「それよりあいつ知り合いっすか?」

「うん……啓一郎さんの知り合いのお医者さんらしいんだけど、鉢合わせしちゃって。あんまりよくない噂があるみたいなんだけど、無碍にするのはまずくて……」

「そうなんすね……あいつの目、何か嫌なことでも企んでるかもしれないんで、なるべく一人では絶対近づかないようにした方がいいっすよ」

 そう言って長谷川くんは鼻を鳴らした。
 
「それにしてもまた偶然だね。今日はひとり?」

 私が質問すると長谷川くんは頷いた。
 どうやらショッピングモールに入院している妹の沙彩ちゃん用のおもちゃを買いに来たと言うことだった。

 おもちゃと言っても着せ替えができるお人形とのことで、以前から欲しがっていたらしい。

「あいつもうすぐ誕生日なんすよ。だからプレゼント用に」

「そうだったの? いいお兄ちゃんしているね」

 私がからかうような口調で告げると照れたのか少しだけ視線を彷徨わせた。
 
 沙彩ちゃんは病気と戦うためにいつでも頑張っている。
 あんなに小さいのに本当に強い子だと心から尊敬した。

「ねえ、そういえば少し前にお見舞いに行きたいって話したと思うんだけど……もしよければ明日行きたいなって思って。どうかな?」

「明日なら検査も特にないし、大丈夫だと思うっすけど……でも」

 そう言って長谷川くんは難しい顔をする。
 
「旦那さんに送り迎えとか頼むならいいと思います。さっきのやつみたいなのにまた絡まれる可能性もありますし」

「そんな……さっきのはたまたまだよ。そんな頻繁に絡まれてちゃ物騒すぎるでしょ……それに、啓一郎さんは今、出張中だから家にいないの。わざわざタクシー使うのもアレだしさ」
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