スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
 私は長谷川くんに送ってもらったあと、言われた通りに啓一郎さんへと連絡しておくことにした。

 ただ、忙しい啓一郎さんに緊急でもないのに電話を掛けるのは迷惑になるかなと思い、メールに『今日梅本先生に会って色々ありそうなところを長谷川くんに助けられました。今送ってもらって、明日は妹さんのお見舞いに行きます』と出来事を簡略化して送る。

 するとメール送信後、5分も経たずして電話がかかってきた。
 あまりにも気付くのが早くて若干驚き、慌ててスマートフォンの画面をタップした。

「もしもし……?」

『紗雪? 大丈夫か! 梅本となんかあったって見たけど!』

 余りにも鬼気迫った怖入りに一瞬腰が引けそうになるが、それだけ自分のことを心配してくれたということにほっこりする。
 愛されているなという実感に口元を緩ませていると。

『紗雪? ねえ、本当に大丈夫なのか? 今からでも抜け出してそっち帰ろうか。うん、そうしよ──』

「待ってください! 大丈夫です。メールにも書いた通り、長谷川くんがちょうど居合わせてくれたので無事でした。明日も長谷川くんに病院まで送り迎えしてもらうので……」

 そう言って誤解を解こうとすると、啓一郎さんは突如黙る。

「……? どうかしましたか、啓一郎さん」

『紗雪は……あの後輩の長谷川くんと今日はずっと一緒にいたってことか?』

「ええっと……ずっとってわけじゃないですけど、午後は一緒にお見舞いの品選んだりとか、沙彩ちゃん──長谷川くんの妹さんのお誕生日が近いのでそれを買ったり……」

 私は聞かれたことを答えたが、電話口で小さく聞こえた言葉に口をつぐんだ。

『……もしかして長谷川くんのこと好きなのか?』

 あまりにも真面目な口調に呆気にとられるが、啓一郎さんの言いたいことをだんだんと理解する。
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