スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
「ふふっ……長谷川くんは後輩で、まあいわゆる男友達ですよ? あり得ません」

『でも…………紗雪、長谷川くんのこと話すの楽しそうだし…………俺は一人寂しく頑張ってるのに妬けるっていうかなんというか……』

 たしかに啓一郎さんが学会で勉強中なのに私の方は浮かれすぎていたと少し反省する。
 だが長谷川くんは言葉通りの友達で、たしかに告白されたこともあったが今まで一度もそういう目で見たことはなかった。

 告白されたということは啓一郎さんに伝えていない。
 長谷川くんの個人的な気持ちを他の誰かに話す気にはなれなかったし、あとは啓一郎さんへの意趣返しでもあった。

 啓一郎さんは昔はよく女の人と遊ぶことも多かったと正直に話してくれたが、やはり女心として複雑な気分になったのだ。
 だからこそ私にも秘密の一つや二つあっても許されるだろう。

 電話口でトーンを落とす啓一郎さんに声をかける。

「ごめんなさい。私、啓一郎さんの気持ちちゃんと考えられてなかったです。啓一郎さんは私が長谷川くんと一緒にいるの……嫌ってことですよね?」

 数秒の間を空け、『うん』と小さく返事がある。
 そういえば以前の足湯のときも啓一郎さんは長谷川くんに嫉妬したって言っていたことを思い出す。
 あのときは正直愛しているから嫉妬したというより、自分の妻が他の男と仲良くしているのが気に食わなかったと考えていたが、今思えば前者なのだろう。

「啓一郎さんって案外嫉妬深いんですね」

『紗雪のことに関してだけはね。だって全部独占したくてたまらないし。多分、紗雪が考えている以上に』

 あけすけに答える啓一郎さんに愛しさが募る。
 こんなに自分のことを大好きでいてくれる人はこの世に他に誰もいないだろう。
 そしてそれほど情念深く、愛を伝えられて嬉しく思わない人はいないに違いない。

 私は思わず顔を綻ばせる。

『ねぇ、紗雪。俺のこと愛してる?』

「愛してますよ」
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