恋文
「おばあちゃん、それどうしようか?捨てるわけにもいかないし」
「そうだねぇ」
「これ、開けていいのかな?」
「そうだねぇ」
祖母はのんびりとした口調で「開けようか」と言った。
もしかしたら一度は封を切っている可能性もある。しかし現状、そうではない可能性の方が高い。
何故開封しなかったのか疑問は残るが大切にしまっていたことは確かだ。それを開けるのはちょっと気が引ける。
「開けていいの?!」
「だって、杏ちゃん見たいって顔に書いてるから」
「…それは、そうだけど」
口籠りながらも何が書いてるのか知りたい気持ちが勝っていた。
「それに、来週お墓参りに行くんだよ。その時に報告しようかと思って。ひいおばあちゃんも内容が気になっているかもしれない。今日これを見つけたのも、何かの運命のような気がしてきたよ。ひいおばあちゃんの読みたいよっていう思いがこれを見つけさせたのかもしれないね」
「…そうなのかな」
パリパリと乾燥する音が聞こえる。
力の入れ方を間違えると破けてしまいそうだ。
祖母が封筒の中から便箋を取り出す。そしてじっとそれを見つめた。
杏も顔を近づけ何と書いてあるのか見た。
しかし達筆すぎて読みにくい。
「ん?愛?…」
「ずっと、愛しています」
祖母の声に驚きながらも聞き返していた。
「そう書いてあるの?」
「そうだねぇ、これはね、恋文だね」
「恋文…」
「杏ちゃんもいつか素敵な人と好きな人と結婚するんだよ。よかったね、今の時代に産まれて」
「…うん」
恋文だよといった祖母は皺をより一層深くして笑った。
完結