惚れたら最後。
ピーンポーン。
いつもインターフォンがなる時間…より今日は15分も遅刻して、、。
「ゆり〜!!おはよ〜!!」
朝っぱらから元気のよすぎる声がした。
玄関の鍵を開ければ、今にも私に抱きつく勢いのピンク色のツインテール。
「うわっ!!乃々っ」
毎回のことなのにこの子…相原 乃々 (アイハラ ノノ)の元気のよさには一線を引く私がいる。
そんな乃々は、私に抱きつく寸前で後ろから伸びてきた長い手によって制服の襟を掴まれてジタバタとする。
「あんたの寝坊でゆりのこと待たせたんだから抱きつく前に謝んな。」
そう言って乃々の後ろから現れた茶髪ストレートの美人、高瀬 麻鈴 (タカセ マリン)。
麻鈴は私と乃々の中和剤だ。
「乃々の寝坊なんていつもの事だし、学校に間に合えば大丈夫。」
そう言って笑えば、「ゆり〜!!だいすきっ」と再び乃々が暴走し出す。
「乃々、やめな。」
そんな乃々の頭をペシッと叩いて、「ほら。2人とも行くよ。」と麻鈴が冷静に言う。
「ちぇっ、はぁい。」
そうすると、乃々は渋々私から離れた。
やっぱり麻鈴がいてくれて助かる。
…と、こんな風に思っているけれど、別に乃々のことが苦手という訳ではない。
寧ろ乃々のことは"だいすき"の部類だ。
ただ、乃々は少しだけ暑苦しい部分があるから。
言うならば乃々と麻鈴は、夏に鳴き続けるセミとソーダ味のアイスだろう。
見た目が派手な2人と地味な私。
あべこべな組み合わせだけれど、小学校からの幼なじみで、2人といると落ち着く自分がいる。
小柄で元気ハツラツな乃々と、長身でスタイルの良い姉御肌の麻鈴。
2人の掛け合いは毎日見てて飽きないし、何より2人が私のことを好きでいてくれるのが嬉しい。
雨宮 百合はなんだかんだ幸せ者なのだ。
だからこのままでいい。
この変わらない毎日がいい。
だからどうか神様_________
「乃々、麻鈴!! 走ろう、あと10分で遅刻!!」
そう言って2人を置いて駆け出す。
後ろの方で、「まじ!?」と焦る麻鈴の声と「めんどくさい〜」とこんな時でも呑気な乃々の声が響いていた。