この先もずっと、キミの隣で。
指で唇をそっと触れた。感触が、今もまだ残っている。


……なんで。

私今、柳瀬にキスされたよね……?


階段を上がってくる音が聞こえる。私は体を壁の方に向けてまた瞼を閉じた。


柳瀬にしては優しく、肩をトントンと軽く叩かれた。

「おい麦、十九時になったぞ。早く起きろ。帰らないとおばさん心配するぞ」

私はムクっと起き上がったけれど、

……だめだ。柳瀬の目が見れない。


「……柳瀬、今日はありがとね。帰ります。あっ部屋着は洗って返しますので、ご心配なく」

それだけ言って荷物をまとめ、そそくさと柳瀬の家を出てきた。
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