いらない物語(続・最初のものがたり)
6
甘すぎるホットチョコレートを
少しずつ飲みながら話し始めた。
不思議、甘すぎなのに、
これはこれで癒される。
ツバサくんは、
食べる手を止めて聞いてくれた。
「ふーん。よく分かんないや」
また、吹き出しちゃったよ!
なんだよ、
自分から話を聞くって言ったのに!
分かんないって。
もうっ
かわいい。
「違うよ、
なぁなの言ってる事は分かるよ。
俺も同じ事思った事あるし。
でも、なんで、それがダメなの?」
え?
「だって。重いじゃん。負担じゃん。」
勇磨しかいない私は重荷だ。
「重荷だとダメなの?」
無垢な瞳で見つめるツバサくん。
ダメだよ。
だって、
ちょっとの事で訳が分からなくなって、
感情的になって、疑って、
嫌なこと言って、
傷つけて、いじわるして。
逆効果なのも分かってる。
どんどん嫌われてウザがられて
相手にしてもらえないのも分かってる。
なのに、やめられない。
ウザイのやめられない。
きっと私に何もないからだ。
勇磨しかないから。
だから、
手に入った幸せを逃したくなくて、
必死であがいて自滅だ。
勇磨だって、きっと嫌だよ、もう。
疲れてる。
だったら私より大人で落ち着いてて、
清楚でかわいくて、
優しい山下先生がいいに決まってる。
「それは違うな」
あ、れ。
前もそんな事いってたな、ツバサくん。
また言い切ってる。
「工藤はさ、別に大人の女性が好きって
言ったんじゃないと思うよ。
その先生の事も眼中にはないと思うな。
一般論だよ。俺だって大人の女性って
聞くとちょっとザワつくもん。」
そう言ってちょっと照れる。
かわいい。
「あとね、わざと、なぁなと反対のこと、
言ったんだと思うよ。」
え?何の意味があって?
もう、ツバサくんの話ってぶっ飛んでる。
「かわいいは、反対じゃないけどね。
でも、そうだな、わざと言ったと思う。
俺だって香澄ちゃんに、同じこと、言っちゃいそうだもん、気を惹きたくて」
ふっ。
そんな解決ある?
全くツバサくんって。
悪意の世界で生きてる私と違うね。
「なぁな、
その、先生が、工藤を気に入ってるのは
あるかなって思うけど、
工藤はなびかないよ、絶対。
なぁなより先に誰かが同じ事しても、
好きになったりはしない。
なぁなだから、好きになったんだよ。
もっと言えば、
なぁなが工藤のファンクラブにいたとして、
初めは拒絶しても、
徐々に好きになってたと思う。」
まさか、そんな事。
わざと笑わせてくれてるのかな。
天然だとしたら、
超おもしろい発想なんだけど!
でも、笑う私に構わず続ける。
その内容にまた泣きそうになった。
「なぁなは特別なんだよ。
自信持ちなよ。
工藤しかなくていいじゃん。
自分がなくてもいいじゃん。
俺だってないよ。
余裕あるなんて、変だよ。
それ、好きじゃないんだよ。」
そんな、事ないって。
ないんだよ、ツバサくん。
だって、勇磨。
ツバサくんと2人でいるの、許した。
前はあんなに嫌がったのに。
もう、どうでもいいんだよ、
私の事なんて。
勇磨の中で変わっちゃったんだと思う。
目の前で大きなため息をついて、
自分の髪をかきむしるツバサくん。
「はぁ、そうなるよね。
まぁ、そうだよね。
おかしいよね、あの工藤だもんね。
やっぱり、俺じゃダメだな。
本人に聞きなよ。
もう、俺、充分時間稼ぎしたしね。
たぶん、もう来るよ。」
え、それ、どういう?
「あ、ほら、来た!」
ツバサくんが立ち上がって手を振る。
振り返って、
入り口に勇磨が立っているのが見えた。
「なんで、ツバサくん。」
慌てた。
だって会いたくない。
今はやだ。
心の準備してから。
「だから、決めつけないの。
ちゃんと話しな。
いいんだよ、わがまま言っても。
押し付けても。
男はさ、嬉しいの。
頼ってくれたら、すごく嬉しいんだよ」
ニッコリ笑うツバサくん。
「でも、勇磨は」
そのまま私の手をぎゅっと握った。
「手、冷たっ」
笑ってからまたぎゅっと握る。
「大丈夫。
あいつは何も変わってないから」
背後に勇磨の気配を感じて、
体が硬直した。
怖い。
「ツバサ、その手、離せ。」
瞬間、ツバサくんは両手をあげて笑う。
「ねぇ、変わってないでしょ。」
「は?何言ってんだ?
お前、次、ナナに触ったら…」
勇磨の言葉を最後まで聞かず、
無理やりハイタッチをして
「じゃあ交代ね。あとは2人で仲良くね」
ツバサくんは帰って行った。
「なんだ、アイツ」
状況を飲み込めない私は、
黙って勇磨について店を出た。
前を歩く勇磨は何も話さない。
なんで黙ってるんだろう。
何で来てくれたの?
私と話をする為に?
わざわざツバサくんに時間稼ぎまで頼んで
ああ、そうか。
勇磨なら、分かるか。
私が合宿まで乗り込んで騒ぐ事。
先生にあたる事。
先生を、守りた、かっ、た?
ダメだ、涙出そう。
このまま踵を返して逃げたくなる。
怖い。
私、フラれるの、かな。
少しずつ飲みながら話し始めた。
不思議、甘すぎなのに、
これはこれで癒される。
ツバサくんは、
食べる手を止めて聞いてくれた。
「ふーん。よく分かんないや」
また、吹き出しちゃったよ!
なんだよ、
自分から話を聞くって言ったのに!
分かんないって。
もうっ
かわいい。
「違うよ、
なぁなの言ってる事は分かるよ。
俺も同じ事思った事あるし。
でも、なんで、それがダメなの?」
え?
「だって。重いじゃん。負担じゃん。」
勇磨しかいない私は重荷だ。
「重荷だとダメなの?」
無垢な瞳で見つめるツバサくん。
ダメだよ。
だって、
ちょっとの事で訳が分からなくなって、
感情的になって、疑って、
嫌なこと言って、
傷つけて、いじわるして。
逆効果なのも分かってる。
どんどん嫌われてウザがられて
相手にしてもらえないのも分かってる。
なのに、やめられない。
ウザイのやめられない。
きっと私に何もないからだ。
勇磨しかないから。
だから、
手に入った幸せを逃したくなくて、
必死であがいて自滅だ。
勇磨だって、きっと嫌だよ、もう。
疲れてる。
だったら私より大人で落ち着いてて、
清楚でかわいくて、
優しい山下先生がいいに決まってる。
「それは違うな」
あ、れ。
前もそんな事いってたな、ツバサくん。
また言い切ってる。
「工藤はさ、別に大人の女性が好きって
言ったんじゃないと思うよ。
その先生の事も眼中にはないと思うな。
一般論だよ。俺だって大人の女性って
聞くとちょっとザワつくもん。」
そう言ってちょっと照れる。
かわいい。
「あとね、わざと、なぁなと反対のこと、
言ったんだと思うよ。」
え?何の意味があって?
もう、ツバサくんの話ってぶっ飛んでる。
「かわいいは、反対じゃないけどね。
でも、そうだな、わざと言ったと思う。
俺だって香澄ちゃんに、同じこと、言っちゃいそうだもん、気を惹きたくて」
ふっ。
そんな解決ある?
全くツバサくんって。
悪意の世界で生きてる私と違うね。
「なぁな、
その、先生が、工藤を気に入ってるのは
あるかなって思うけど、
工藤はなびかないよ、絶対。
なぁなより先に誰かが同じ事しても、
好きになったりはしない。
なぁなだから、好きになったんだよ。
もっと言えば、
なぁなが工藤のファンクラブにいたとして、
初めは拒絶しても、
徐々に好きになってたと思う。」
まさか、そんな事。
わざと笑わせてくれてるのかな。
天然だとしたら、
超おもしろい発想なんだけど!
でも、笑う私に構わず続ける。
その内容にまた泣きそうになった。
「なぁなは特別なんだよ。
自信持ちなよ。
工藤しかなくていいじゃん。
自分がなくてもいいじゃん。
俺だってないよ。
余裕あるなんて、変だよ。
それ、好きじゃないんだよ。」
そんな、事ないって。
ないんだよ、ツバサくん。
だって、勇磨。
ツバサくんと2人でいるの、許した。
前はあんなに嫌がったのに。
もう、どうでもいいんだよ、
私の事なんて。
勇磨の中で変わっちゃったんだと思う。
目の前で大きなため息をついて、
自分の髪をかきむしるツバサくん。
「はぁ、そうなるよね。
まぁ、そうだよね。
おかしいよね、あの工藤だもんね。
やっぱり、俺じゃダメだな。
本人に聞きなよ。
もう、俺、充分時間稼ぎしたしね。
たぶん、もう来るよ。」
え、それ、どういう?
「あ、ほら、来た!」
ツバサくんが立ち上がって手を振る。
振り返って、
入り口に勇磨が立っているのが見えた。
「なんで、ツバサくん。」
慌てた。
だって会いたくない。
今はやだ。
心の準備してから。
「だから、決めつけないの。
ちゃんと話しな。
いいんだよ、わがまま言っても。
押し付けても。
男はさ、嬉しいの。
頼ってくれたら、すごく嬉しいんだよ」
ニッコリ笑うツバサくん。
「でも、勇磨は」
そのまま私の手をぎゅっと握った。
「手、冷たっ」
笑ってからまたぎゅっと握る。
「大丈夫。
あいつは何も変わってないから」
背後に勇磨の気配を感じて、
体が硬直した。
怖い。
「ツバサ、その手、離せ。」
瞬間、ツバサくんは両手をあげて笑う。
「ねぇ、変わってないでしょ。」
「は?何言ってんだ?
お前、次、ナナに触ったら…」
勇磨の言葉を最後まで聞かず、
無理やりハイタッチをして
「じゃあ交代ね。あとは2人で仲良くね」
ツバサくんは帰って行った。
「なんだ、アイツ」
状況を飲み込めない私は、
黙って勇磨について店を出た。
前を歩く勇磨は何も話さない。
なんで黙ってるんだろう。
何で来てくれたの?
私と話をする為に?
わざわざツバサくんに時間稼ぎまで頼んで
ああ、そうか。
勇磨なら、分かるか。
私が合宿まで乗り込んで騒ぐ事。
先生にあたる事。
先生を、守りた、かっ、た?
ダメだ、涙出そう。
このまま踵を返して逃げたくなる。
怖い。
私、フラれるの、かな。