こんなにも愛しているのに〜私はましろ
叫ぶだけ叫び、喚くだけ喚いたら父と女の人置いて
闇雲に歩き、訳がわからないまま
とりあえず駅に着いた。

父も私に追いついたようだが、泣きながら自分を睨む娘に声をかけるどころか
近寄ることもできなかったのだろう。
離れたところから私を見ているだけだった。

私は泣き顔を人目に晒しても、奇異な目で見られても
父のあさましい姿を見たショックで、周りのことなど
どうでもよかった。
できれば
父を電車から突き落として追いかけてこないように
したかったくらいだ。

家に帰り着いた途端
母に今見てきたこと全てをぶちまけた。
冷静になんて、していられなかった。

なんとか私の話に、母の理解が追いついたようだったが
相当な衝撃だったろう。
しかしそれよりも
未だかつてない私の様子に
大きな衝撃を受けたようだった。

父は私の絶対的な存在だった。
どんなに忙しくても
私のことを思ってくれて、
気にかけてくれている。

幼い時、
父と繋いだ手に、
肩車をしてもらったその肩に
私は父との間に溢れるくらいの愛情があると
信じていた。

忙しくて
以前ほど一緒にはいられなかったけど
それでも
受験勉強に没頭している私に
気遣いの言葉を必ずかけてくれていた。

でも
あれは
違うんだ。

そんなことを言っていながら
自分は若い女の人と不倫をしていたんだ。

ホテルの前にいた時間。
そんな時間にそんなところにいるくらいなら
家に帰ってきてよ。

お母さんが毎日どんな思いで
お父さんのことを気遣っているのか。
お母さんもお父さんのことを信じていたんだよ。
< 15 / 117 >

この作品をシェア

pagetop