こんなにも愛しているのに〜私はましろ
私は父を受け入れられなかった。
父と出発する前に会うことも拒否した。

父の様子など知りたくもないし、父からの謝罪の言葉など欲しくもなかった。

父がシンガポールに行ってから
私は自宅マンションに帰って、母と二人暮らし、、、元の生活に戻った。

理恵おばさんのところは、もうそんなにお邪魔できないと思う。
気にしないでいいよ、っていつもの調子で明るく言ってくれたが
理恵おばさんも事務所に勤めるパラリーガルの兼子 迅(かねこ しゅん、)くんと
一緒に住み出したから。

迅くんとは顔馴染みだった。
もちろん、理恵おばさんの公私ともにわたるパートナーだとも聞かされた。
公はわかっていたが、それがプライベートでもと、内心驚いた。
迅くんは理恵おばさんよりうんと年下で、私はてっきり理恵おばさんが育てている
弁護士の卵だと思っていた。

パートナーがいるのに、私はずっと理恵おばさんのお宅に居候をしていたのだ。

「やぁねぇ、ましろ。
いいのよ。茉里やましろは家族ですもの。迅を選ぶか茉里たちかって言われたら
茉里たちを選ぶわね。」

と笑いながらそう言った。
迅くんも笑顔で頷いていた。

母も初めて聞いたようで驚いていたが、
理恵おばさんのあんな幸せそうな顔を見られて
よかったと、二人を祝福していた。

しばらくは新婚さんに遠慮することにした。

それよりも
私には重大事項が勃発していた。
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