こんなにも愛しているのに〜私はましろ
私の最悪な時間は放課後にピークになった。
HR後、
私たち委員+ヘルパーは国松先生から、職員室に呼び出された。

職員室に入ると、他のクラスの委員も呼ばれていたようで
1年生クラス委員全員で、学校の探検をしてこいとのことだった。
学校の見取り図を頭に叩き込んでこいと。

どこに何があるかわかっていないと、
みんなを誘導したりできないから、、、

正論です。

そうだろうな。
でも
他クラスの委員は、特に女子は、校内探検よりうちのクラスの男子委員に
興味津々だった。

他の女子クラス委員から

「羨ましい。すっごいイケメン二人に囲まれて、、、」

囁かれた。

代わってあげようか、、、

そのうち
うちの男子は女子に囲まれていた。
私は、そんな一群に構わずに、見取り図を見ながら歩き進んで行った。

「ねぇ、、、ねぇ、、、」

ねえって誰を呼んでいるの?

「1年Cの君。」

私のことのようだ。
横を向くと、私と同じ高さに目線が合う、男子がいた。
先ほど、自己紹介をされたが、興味がないので何も覚えていない。

「多分、覚えていないよね。
僕Eクラスの柏木 拡(かしわぎ ひろむ)。
西澤さんと同じ中学だったんだよ。」

「えっ、そうなの?」

申し訳ないくらい、記憶にもない。

「そうだよ。
転校してきた時さ、噂になっていたんだよ。」

「噂?」

「うん。すごいきれいな子が転校して来たって。
そんな嫌な顔をしなくていいじゃない。」

「で、、、何だろう?」

私はこういう時、ついつい冷たい言い方になる。

「うん?
ただそれだけ。
でもさ、せっかく同じ高校になったんだから、
会ったら挨拶くらいしてくれる?」

彼は人懐っこそうな顔を少し綻ばせて、私に言った。
そうね、、、別に無視することもないか。

「ごめんなさい。
中学3年で転校して、新しい環境に一杯一杯だったの。
受験勉強らしきこともちゃんとしてこなかったら、、、
嫌な気分にしていたら、謝るわ。」

私は素直に言った。

「いや、そんなことはないよ。
本当にただ、同じ高校になったからさ、少しはクラスメートらしく
しようかなった、思って。」

「柏木くん、よろしくね。」

そう言うと、なぜだか柏木くんは少し赤くなった。

「おぉ、Eクラスの柏木くん!」

チャラ男が声をかける。
人の名前を覚えるのが得意なのだろうか、もう名前を呼んでいる。

「うちのお姫様を、口説いちゃいけないよ。僕達の許可なしに。」

茶化すようにチャラ男が言っているが、その内容にも気分が悪い。

「手塚(てづか)くん、僕と西澤さんは中学が一緒だったんだよ。
覚えてもらっていなかったけど、、、」

生真面目に答える柏木くんに、チャラ男が、、、、
あぁ、手塚っていうんだ。

本当に興味がないものには、とことん興味がない。

「うちのクラスの手塚くん。早く済ませて帰りたいの。
先に回って確認して、帰ってもいいかしら?」

「うちのクラスの手塚くん、、、ありがとう。名前を覚えてもらえたみたい。
手塚 達(てづか とおる)です!西澤 ましろさん!
ましろなんて可愛い名前だね!」

「そ、ありがと。
じゃぁ、先に行くから。
手塚 チャラ男だったっけ?」

私の返しに、みんなは大笑いをしてくれたが、失礼なことを
言ってしまって、早くも後悔をしていた。

「チャラ男も、早く回ります!」

手塚くんはおどけた調子で、切り返した。
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