こんなにも愛しているのに〜私はましろ
入り口で
靴を乱暴に脱ぎ散らかして、私は上履きも履かずに
生徒会室を一目散にめざした。

『スターッン!!』

乱暴に開けた引き戸から
私が必死の形相で入室したからであろう
中にいた男子たちは、全員が驚きで固まっていた。

そんなことはかまいもせず
手塚くんのシャツの胸ぐらを掴んで
一気に引っ張り上げ、
そのまま走り出した。

手塚くんはあまりの出来事に何も言えず
私のなすがままに引き摺られている。
途中
担任の国松先生とすれ違ったので
私は声を上げた。

「先生、今から5分後に正門のところにいらしてください。
きっかり5分後です!」

すれ違いざまのこの叫びに先生がどう答えられたのかも
わからないまま、
私は靴も履かずに手塚くんを正門のところにいる彼女たちに
引き渡した。

「げっ!!」

手塚くんの第一声だ。

私はそれから校舎に引き返して、靴を履いた。
どういうわけか脱ぎ散らかされた靴が
きれいに揃えてあって、なんだかほっとした。
それから
また急いで走って正門に戻り彼女たちに言った。

「手塚くんは連れてきたので、私はこれで帰ります。」

私は後がどうなったかも、確かめることもなく下校した。
国松先生が間に合えばいいけど、と思いながら。
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