こんなにも愛しているのに〜私はましろ
なんだか
猛烈に腹がたった。

帰りの電車の中で、あの模試の日の辛い出来事の原因である
手塚くんたちにここまできて、こんな巻き込まれ方をされてしまったことに。
猛烈に腹が立ったけど、
自分の感情のままに動いたことについては
ちょっと
爽快な気分でもあった。

あのまま
手塚くんをあの彼女たちに放り投げればよかったな、、、

「今日は何かあった?」

夕飯時に母が尋ねた。

「どうして?」

「う〜ん、いつも凪のようなましろに漣が立っているような。。。」

鋭い。。。
しかもその的確な表現。
母のこういうところは好きだ。

「試験の山が大当たりに当たったからかな。」

「山、、、珍しい。ましろが山を張るなんて。」

「まぁね。」

母と二人の食卓の会話はここのところ他愛もないことばかり。
意識して父の話題にならないようにしている母のことは、
その様子でわかる。
仕事のメールチェックのふりをして、父からのメールを食い入るように
見つめたり、携帯のチェックも細かにしている。

「お母さん、、、
私に遠慮しないでお父さんと電話で話したり、
ビデオ通話をしたりしていいのに。

お父さん、毎日というか1日に何回もメールを送ってくるんでしょう。
きっと、お母さんの声を聞いたり顔を見たりしたいはずよ。」

「別に、、、いいのよ。」

母はそういうふうに言う私が、決して父を許したわけではなく
自分のことを思って言っているにすぎないことを、きちんと
わかっていた。

「お母さんはお父さんと離婚しないの?」

その一言を私はいつまでも聞けないでいた。
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