こんなにも愛しているのに〜私はましろ
「きっとさっきまでの話を、
話すと茉里が必要以上に心配するかもしれないという、思いと、
その話をするときに、あの日の父親の話を蒸し返して、
お母さんをまた苦しめるかもしれない、という思いで話せなかったのだろうけど、
それは、ましろが落ち着いて整理したら、私に話さなくても、全部茉里に話せたことでしょ?

でも、茉里に言えない何かがあったのよね。」

理恵おばさんは私の気持ちを、的確に言い表した。

「クラスメートの出来事で、結局は、どうしてそうなったのか
結果どういうことになったのかが、全然わからなくて、気持ち悪い。
絡まれただけでおしまい。。。?

まぁ、下手に巻き込まれるくらいだったら、知らない方がいいと思うのだけど、
そんなことを考えていたら、お父さんのことだって、あの女の人が
そもそもどういう人だったのか、お父さんとどうしてそうなったのか
お母さんと心が離れていったのはなぜなのか、、、」

「わからないことだらけだね。。。」

「私がまだ子供だから、子供だから知らなくていいって思っているのか。

私のために離婚しようとか、できないとか、、、お父さんとお母さん、、
お父さんは離婚はしたくないって言っている。
お母さんが強く離婚って、言わないのは、まだお父さんのことが好きだから?
私が離婚してって言ったから離婚しようと思ったのか。

じゃぁ、私があの日見たお父さんの姿をお母さんに言わなければ
なかったことになって、お母さんを苦しめることにならなかった、、、」

「ましろ、、、ましろ、、、、もういいから。
自分をそうやって追い詰めるのはやめなさい。」

私は自分の気持ちを吐露しながら、いつの間にか泣いていた。
あの日からずっと、自分の頭の中を渦巻いていた問題だ。
溢れそうになっては蓋をし、また溢れそうなっては蓋をし、、、
それが
この出来事の発端ともなったあの彼女たちに再会して
とうとう蓋ができなくなっていた。

「誰がどう見ても、ましろのせいではない。

情けない姿を見せた西澤くん、冷却期間と言って問題を先送りに
しているだけの西澤くんと茉里。

お互いに、まだ夫婦としての情が残っているから、決められないって
はっきり言ったほうが、ましろには少しは楽な思いをさせてあげられるに
まだまだ、何も知らない子供だと思っているよね。

でも
そこに私には強く言えない立場でもあるのよ。
本当のところ、あの二人の間の思いを100%知っているわけでも
ないしね。
だから、ましろに一時の気休めのようなことは言えない。」

「。。。。」

「私にできることは、今のましろの思いを茉里に伝えて
あんたの娘はちゃんと大人になっているから、きちんと話してあげなさい。
っていうことくらい。」

「。。。。。」

「けど、今の茉里には難しいかもしれない。
本人が迷子のような状態ですものね。
できれば、もう少し待ってあげて。

親より大人になってって願うことが、どんなに辛いことかわかっているけど
きちんと話せるには、もう少し時間が必要だと思うのよね。」

理恵おばさんの話は、私が欲しい答えではなかったが、多分
今の状況ではこれが精一杯なのだろうということは理解できた。

母にも少しは冷静になって、自分の気持ちを伝えることができそうな気がする。

今頃
母は私と理恵おばさんがどんな話をしているのか、気が気ではないはずだ。
なのに
私の口から出る話が怖くって聞けないだろう。
何を話してたの?って。

なんだか
申し訳ないって、、、いつも私を見ながら思っているのかもしれない。
< 37 / 117 >

この作品をシェア

pagetop