こんなにも愛しているのに〜私はましろ
夏休みは、学校の補習、塾の夏期講習などで、自分の時間を埋め
空いている時間は図書館で自主学習、
あとは、母方のおじいちゃんおばあちゃん宅へ、母と重ならないように
遊びに行った。

本当に子供染みていると思ったが、母と二人の生活は
必要以上に母と話すことが多く、今の私からしたら
それは母への恨みつらみを一気に吐き出しそうで、なるべく
母と一緒の時間を少なくしたかったのだ。

母への昏い思いもあったし、思いっきり詰りたい気持ちもあった。
でも
母を苦しめることもしたくないという思いもあり、母と一緒にいる時間を極力減らす、これが私にできる、唯一の策だった。

学校では、
西崎くんと補習で一緒になることはわかっていた。
思いっきり無視するのも大人気ないと思い、平常心平常心と唱えながら
挨拶はきちんとした。

ただ
心が伴っていないのは彼にもわかったのだろう、彼の方も
平常心を唱えながら、挨拶をしているようだった。

それだけ。

手塚くんは夏休み最後の補習で、登校した。
丸坊主の頭で。

みんなから、どうした?と揶揄われていて、いつもの調子でおちゃらけながら

「うちの爺様から、寝込みを襲われて坊主にされた。」

と言っていた。
本当のことだろう。

西崎くんから何と言われたのかはわからないが、私を見ると、ちょっと
泣きそうな顔して、

「おはよう。」

と言うと、スッと視線を外した。

二人と私の間に距離を置けたようでよかった。

それだけ。
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