こんなにも愛しているのに〜私はましろ
「西澤さん、、、、」

「。。。。。」

「あいつの話、、、」

「私が雪女ってこと?」

「いや、違う。陸都のこと。」

「私、そういう話は好きじゃないから、また、ここでそれを蒸し返さないで
くれる?」

手塚くんの話を拒絶したかった。
西崎くんの醜聞を聞かされるのは、自分には関係ないし勘弁してほしい。

「これだけは聞いてほしいんだ!
陸都の話、あれ本当だけど、違うから。」

私に何とか聞かせようと、彼は早口で一気に言った。

どういうことだろう。
本当だけど違う?
それよりもなぜ、私にこういう話をする?
親友の西崎くんを悪く思われたくない、ためだろうか。

「あの高校1年の時の女子たち。
4人いて、うち二人はいろいろとやばいこともやっていて、少年院送りになって
残りはあの二人に、ついて回っただけということだけど、一人は退学処分
一人は停学になって、、、」

本当に自分達の手に負えないような人たちを、手塚くんは相手にしていたのだ。

「陸都は否応無しに俺がしでかしたことに巻き込まれて、、、
陸都の親父さんもお袋さんも、俺とは絶対に付き合うなって怒っちゃって、
だけど、陸都は俺のことは親友だからって、弱い奴だから、俺が側に
いてやらないとって。。。」

「。。。。。」

私の意志に反して、手塚くんは話し続けた。

「その停学になった子が、陸都のことが好きで。
半年前ぐらいから、陸都に付き纏うようになったんだ。
あの4人のうち、停学になったとはいえ、学校に残ることができたけど、
もちろん浮いてしまって、残りの3人のツケを払うかのように、学校でも
シカトされて、居場所がなくなっていたんだと思う。

陸都への思いを病的なほどに募らせて、、、ストーカーにまでなって、
俺、国松先生に相談しようって言ったんだけど、いい加減前のことで
国松先生に迷惑をかけたし、結果俺たちが2年生になったのを機に、
先生は担任を外されてしまって、、、これ以上、迷惑をかけられないだろうって。」

国松先生が、担任を受け持たなくなったのは、あの事件が影響していたのか。

「陸都がどんなに拒否っても、あの女は諦めないし、挙句の果てには
陸都の目の前で死んでやるって、脅すし、、、」

「誰か、助けてくれる人はいなかったの?」

思わず反応してしまった。
先生も理恵おばさんも、大人を頼りなさいって言っていたし。

「いた。。。
陸都の従姉妹。
偶然だけど、あいつらの先輩で、強い人。

陸都とは兄弟同然に育って、千花(ちか)さんっていうんだけど、
千花さんが、陸都がストーカーに遭っているのを知って、ストーカーを
退散させるための
筋書きを作った、、、」

「大人の人、、、?」

「俺らより3つ年上。
千花さんが陸都とカップルになって、ストーカーを煽って、、、
ストーカーは千花さんに弱い立場だったらしく、直接陸都に話しかけたり、
うるさいぐらいに、まとわりついたりはしなくなったけど、それでも
陸都に手紙を出して、一度でいいから付き合ってだの、一度でいいから
話を聞いてだの、相変わらずのところもあって、、、」

私だったら、そこまでされたら怖くて警察に届けるのに。
どうして西澤くんは頑なに、それをしなかったのだろう。

「で、最終手段としてストーカーが見ているのをわかっていて
二人でラブホに入るところを、毎回見せたんだ。。。」

私はそういう手段をとった二人を思って、思いっきり眉を顰めた。

「誤解しないで、、、誤解しないで!
何もないから、そういう風に思わせるためのことだから。」

「でも、そうだとしても、二人で入って、出てくるまで計算を
していたってことでしょう?

手塚くんも一緒に入ったの?」

「いや、俺は一緒にはいなかったから。
そういうことをしたということも、終わった後に聞かされた。
そんなことしか方法はなかったのかって、思うけど、俺は陸都を
信じているし、千花さんとのこともそんな関係じゃないって
知っているから。」

西崎くんはあの日の私の父の姿を、思い出していたのだろうか。
相手に与える衝撃としては充分すぎる、その行為。

「でも、何回目かでストーカーがホテルに入っていく二人に
向かって、何だか喚いたみたいで、それでも無視して二人で入って
時間いっぱいいて、出てきたら、まだストーカーがいて、、、

また喚き出して、、、だから千花さんが思いっきり引っ叩いて、
黙らせたらしいけど、ラブホの前に不審な女子高生がいるって
誰かが通報した後らしく、警察が来て、3人とも補導されたんだ。」

いつのことだったんだろう。
西崎くんが目に見えて、昏くなってきた頃だろうか。
< 47 / 117 >

この作品をシェア

pagetop