こんなにも愛しているのに〜私はましろ
結局
母はそんな父でも、嫌いになれないそうだ。
私も母に酷いことを言ったが、母を嫌いにはなれなかった。

だからこそ
私のせいでやり直そうとしている両親を
別れさせたくなかったのだ。

本当は
もっともっと、正気を失うほど醜く喚きたかったが
もう
母を壊したくなかった。

母には
父のところへ行って、自分の正直な気持ちを言って来たらと
私は言った。お母さんの重い愛から、しばし私を自由にしてと。

日々
再三再四、母にシンガポール行きを進めて、やっとどうにか
母を父の元へ送ることができた。

母は留守中を心配して、理恵おばさんに頼んだりしていたが
もう高校2年にもなっているのだ、高々一週間にも満たない
一人暮らし、予行演習だと思ってと言って、一人留守番をすることに決めた。

母は父に会う喜びと、緊張と、私に対する若干の後めたさか、複雑な顔をしていた。
きっと
父は単純だから、母をどこに案内しようかと、舞い上がっていることだろう。

今回の父の不倫未遂?から始まった、私の中の不協和音は
今回の件からではなく、弟の不幸から始まっていた。

父に、もうこれ以上母を壊して欲しくない。
私は父を許しているわけではないけど、母が父を許すのとは別問題だ。

男の人が全員そうだとは言わない。
でも
手塚くんといい、西崎くんといい、私を否応無しに巻き込んでしまう
男の人たちは
誠実というところからは遠く離れている。

父は誠実だったのだろう、、、
けど
どこかでそうではなくなった。

どうして、誠実ではなくなるのか
どうして、愛する人を蔑ろにできるのか
まだ私にはわかりそうもない。

本当に大切にしたい人がいながら
別に
どうでもいい人と一時の感情で関わり合ってしまう
その感情がわからない。

それは
大人になったらわかるのだろうか。
大人っていくつからが大人、、、?

男の人を好きになる感情を
私はこれから先
持てそうもない気がする。



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