こんなにも愛しているのに〜私はましろ
母は必要以上に私のことが心配らしく、1日に何回も連絡を寄越した。
はじめは、それにいちいち応えていたが

『こんなに私にメッセージをよこす暇があったら
お父さんとたくさん話してください。
そのために行ったのでしょう。』


とうとう止めのメッセージを母に送った。

以来
朝と晩の2回程度に、母からの連絡が減った。

私は
結構一人暮らしを楽しんでいた。
父が帰任したら、私は家を出て暮らそうと決めたいたので、
その予行演習と思えば
日々の家事のルーティンも効率よくこなせた。

母が帰ってきた時に家をきちんと保っていれば
少しは
私が一人暮らしができると、思ってくれるかもしれない。


母は父といろいろと話をしているだろう。
父が帰国したら
今度は私が父と向かい合って、話さなければいけない。

ただ
黙って父と入れ替わりのように
この家を出ていくわけにはいかない。

’一人暮らしをしたいから’

という弱い動機で乗り切れるものでもない。
あまり
感情的になってあの時のことを言いたくはないが、
父が私たちに背を向けた、本当の理由を知りたい。

母と私を差し置いてまでして、
他の女の人に心を持っていかれた理由を。
母がいないところで話したい。

そういうことを思っているうちに、
予定通りに母が帰国した。
その顔は、本人が気づいているかどうかわからないけど
すっきりとしていた。
そして
幾許かの、私への申し訳なさも残していた。

「お母さんが決めた通りで、、、
私はいつまでもお母さんと一緒にいられるわけじゃないし
お父さんとやり直したいんだったら、それでいい。」

母が父と別れて、私と二人暮らして行こうと、決めたなら
私は母を支えていくことに、何ら躊躇うこともない。

帰国した母は、父と一緒にいたいという気持ちが顔に溢れていて
私は母の気持ちを軽くするために、そう言った。

母のことは大事にしたいし、好きだが
父のことは嫌い、、、というより、もう信頼も尊敬もない。
だが
夫婦としての二人のことは、私にはわからない。
二人の子供であるが故に、わからない。
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