こんなにも愛しているのに〜私はましろ

大きく動く私たち

学部生3年、大学5年のクリスマス。

双子が生まれてからは、私は律儀にも実家で、クリスマスを過ごすようになった。
この年は双子も二歳を過ぎて、まだよくわからないだろうが、喜怒哀楽を
しっかりと表すようになっていて、プレゼントされることのうれしさを
素直に表現できるようになっていた。

今年は、私からのクリスマスプレゼントを喜んでくれ、
一緒にクリスマスケーキを楽しむはずだったのが、理恵おばさんからの
命令で、場違いなクリスマスパーティーに連れて行かれる事になった。

理恵おばさんは、あんなに思い合ってたはずの兼子 迅(かねこ しゅん)くんと
別れ、その痛手からなのか、面変わりするほどやつれ、母が説得をして
暫く休養をさせていた。

その休養明け、

’今まで休んでいた分、しっかりと営業しなくっちゃ!’


張り切り、今回の地元の名士を集めたクリスマスパーティーに参加したのだ。

あの進藤さんも、スマートにタキシードを着こなし、イケメン弁護士ぶりを
はっきして一緒に参加している。

なんで私が参加する必要がある?と思ったのだが、

’少しは、華やかな世界も見なさい。’

と社会勉強の一環として、誘ってくれたらしい。

理恵おばさんは、営業スマイル全開で、
どこぞの会社の社長さんや、そのパートーナーや奥様と、
卒なく会話を交わし、優雅な手つきで、名刺交換なぞをしていた。

進藤さんも、理恵おばさんからハッパをかけられて、こちらも営業スマイル全開で
女性経営者の心に、うまく取り入っているようだった。

地元の名士のが集まっているパーティーだ、陸のご両親もいらしていた。

陸のお母様が、私を見つけて、わざわざ話しかけてくださった。
よっぽど私の姿が、心もとなく見えたのだろう。

理恵おばさんも進藤さんも営業で、私から離れていたため、一人で
壁の花よろしく、会場の隅っこで、カクテルを舐めていた時だった。

「ましろちゃん、まぁ、いらしてたのね。
今日は双子ちゃんのクリスマスパーティーはよかったの?

こんなわけがわからない集まりを、律儀にクリスマス本番にしなくってもね。

うちも子供が小さくって、クリスマスは家にいてあげたかったのに
このパーティーに呼び出されて、本当に、嫌だったのよ。」

この会場には、誰もが知る総合病院の院長夫人である陸のお母様と、
お近づきになりたい方が多くいらっしゃるのだろうに、お母様は
私相手に楽しそうに話しをしてくださっている。

母よりも少し年上のはずだが、若々しくおっとりとした雰囲気が
今日の装いとマッチして、上品で優雅な方だ。

「ましろちゃん、素敵なドレスね。お母様のお見立て?」

私はその日、上から下まで、理恵おばさんと母に飾り立てられていた。

髪は緩くアップにされ、背中が大きく開き、上半身は体の線に沿って
ウエストから下は美しくギャザーが入ったベージュピンクのドレスを
身に纏っていた。
随分と大人っぽくって、ちょっと躊躇したのだが、薄く透けて見える
ボレロが、全体を少し甘く見せてくれて、ちょっと安心して着ることができた。

「母と、今日私をここに連れて来たあの母の親友が、、、」

目線で理恵おばさんを示したら、

「あら、、、真崎さん。」
「ご存じでいらっしゃいましたか?」

「ええ。
陸都がめちゃくちゃだった、高校の頃、、、ましろちゃんもご存じよね、
その時にお世話になった弁護士さんなの。」

あの時の、、、偶然に理恵おばさんのオフィスであった国松先生の姿が
フラッシュバックされた。

「とても、良い方で。
ましろちゃんのお知り合いなのね。」

「私の第二の母です。今日も、お節介にも違う世界を見なさいって
強引に連れて来られました。」

「まぁ、、、ましろちゃんもクリスマスを一緒に過ごす恋人がいないの?」

ましろちゃんも。。。

「陸都もクリスマスにブラブラしているのならって、、、将来後継でもあるから
一緒に来いって、父親から言われて。

嫌だとかなんとか言っていたのだけど、西条病院のお嬢さんからエスコートを
頼まれて、、、ほら、あそこに。」

お母様が指差す方向に、タキシードを着た陸都とその腕にほとんど
絡みついているような、女性がいた。
時々見合わせる顔が、なんとなく幸せそうで、、、、

そういう陸の姿を目の当たりにして、初めて自分の胸の奥がチリリとした。。。
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