冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
バイクの許容重量を心配して言った訳ではなかったが、気にしないようにスマートに返してくれたのだと察して、心が温かくなる。
「スカートじゃなくて良かった。危ないから、ちゃんと掴まれ」
遠慮がちに腰に手を回していたのがバレて、力強く引き寄せられた。
初恋の宇一さん以外で、こんなに男性とくっついたのは初めて。素直に甘えるのが緊張する。
やがて走り出したバイクは初めは怖かったけれど、疾走感が気持ちよくて、冷たい風も気にならないほどだ。
バイクは事故が起きたら怪我も大きくて危ないとイメージをしていたけれど、彼の運転は優しく穏やかで、私を気遣ってくれているのが良く伝わってきた。
普段は世界が交わるはずのない男性に連れられて、ニューヨークの街並みを移動しているのが夢みたい。
数十分走ると、やがて目的地のオペラハウスが見えてきた。建物は白い大理石で覆われていて、全面ガラス張りの正面は綺麗なアーチで飾られている。
送ってもらえたおかげで、十時の開場前に到着できた。
降車の合図に合わせてバイクから降りると、彼はヘルメットを脱いでこちらを向く。