冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


「近々、エントリーを考えているパティシエ向けの講習会がある。久我さんは海外での実務経験もあるし、チャレンジしてみるのもいいんじゃないか?」


 講習会は、エントリーまでの流れやレシピの作り方、工夫点などを歴代の日本代表者が教えてくれるもので、技術の講習もあり、とても参考になりそうだ。

 舞い込んできたチャンスを逃すわけにはいかない。

 もし、日本代表に選ばれて入賞できたら、パティシエとして一人前になるという夢に近づく大事な一歩になるだろう。


「はい。ぜひ、やらせてください!」


 ふたつ返事で承諾すると、職場の先輩たちは快く応援してくれた。

 椿さんが出張に行っている間に、私も少しずつ成長したい。

 国内予選への参加を電話で伝えると、彼は自分まで嬉しそうに笑う。


『いいな。実力を試すいいチャンスだ。応援してる』

「ありがとう。甘くない世界でも、できる限りやってみるよ」

『ああ。自分が納得できるまで頑張れ』


 まっすぐな言葉は、私に期待をしてくれているのが伝わってくる。仕事に真摯に向き合って結果を出してきた彼からの応援は、人一倍心に響いた。

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