冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
それは本気で言っているの? ビジネスの面では多少相手を褒めるだろうが、私は今まで冗談でも彼にお世辞を言われた記憶はない。
「そ、そんな甘いセリフを言う人だっけ。無理に励ましてくれなくてもいいのよ?」
「俺は二度と藍に嘘はつかないと決めた。もう気持ちも全部ダダ漏れたんだ。今さら取り繕ったりしない」
「私のこと、綺麗じゃないって言っていたのに」
「綺麗系じゃなくて、可愛い系だと言ったんだ。俺には可愛く見えているって、自覚しておけ」
仮面が外れた途端、ボロボロと本音が溢れるようになってしまった。アメリカ育ちのホテル王は、恥ずかしげもなく言葉を伝えてくるので心臓に悪い。
こちらがドキドキしているのを察したのか、いつもの意地悪な微笑を浮かべられた。
「藍は初心だな。こんなので照れてたら、後々身がもたないぞ」
「ど、どういう意味?」
「反応が可愛いから構いたくなる。もっと恥ずかしくなることを言ってやろうか」
「もう! またそうやってからかって……早く帰ろう!」