冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 それは本気で言っているの? ビジネスの面では多少相手を褒めるだろうが、私は今まで冗談でも彼にお世辞を言われた記憶はない。


「そ、そんな甘いセリフを言う人だっけ。無理に励ましてくれなくてもいいのよ?」

「俺は二度と藍に嘘はつかないと決めた。もう気持ちも全部ダダ漏れたんだ。今さら取り繕ったりしない」

「私のこと、綺麗じゃないって言っていたのに」

「綺麗系じゃなくて、可愛い系だと言ったんだ。俺には可愛く見えているって、自覚しておけ」


 仮面が外れた途端、ボロボロと本音が溢れるようになってしまった。アメリカ育ちのホテル王は、恥ずかしげもなく言葉を伝えてくるので心臓に悪い。

 こちらがドキドキしているのを察したのか、いつもの意地悪な微笑を浮かべられた。


「藍は初心だな。こんなので照れてたら、後々身がもたないぞ」

「ど、どういう意味?」

「反応が可愛いから構いたくなる。もっと恥ずかしくなることを言ってやろうか」

「もう! またそうやってからかって……早く帰ろう!」


< 160 / 202 >

この作品をシェア

pagetop