冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
激愛ランコントル


「おはよう」


 翌日、寝室を出たとき、コーヒーを片手に外国の情報誌に目を通していた椿さんが、声をかけてきた。

 リビングで顔を合わせ、なんとなくそわそわする。


「お、おはよう」

「パンでいいか? サラダもある」

「うん。ありがとう」


 早起きの彼は、私の分の朝食をテーブルに並べて、電気ケトルにスイッチを入れた。

 数分も経たずにお湯が沸き、椿さんがこだわって豆を買っている目覚めのコーヒーが、じんわりと体に染みる。

 想いを伝え合ってから、なんだか恥ずかしくてまっすぐ見れない。

 昨日は、帰ってから夕食をとった後、椿さんがパリから送ってくれたお菓子を一緒に食べた。他愛のない会話をして、久しぶりにゆっくりとふたりだけの時間を過ごす。

 ソファに並んで腰掛けて、ひとりの生活が少し寂しかったと伝えると、彼はラスベガスの事業が落ち着いたら、ふたりの時間も増やせると言った。

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