冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした

 就職後、ホテルの従業員が、「久我一族のイケメン遺伝子」と湧いていた。

 どうやら、私がニューヨークで出会った久我さんは、総支配人の従兄弟(いとこ)であるらしい。

 去年、東京に出張として来て、一時的に働いていた時期があったようで、すれ違いになってしまったのがショックだ。

 また会えたら、留学の経歴と技術を認められて少しは成長できた自分を見せて、あの時のお礼をちゃんと伝えたい。

 あれからダイエットにも励み、標準ながらも引け目や劣等感を感じない、健康的な体型になれた。

 もう、以前のどん底にいた私とは違う。

 人生を変えるきっかけをくれた久我さんは、私を覚えてくれているだろうか。


 『I’m looking forward to talking with you』


 また話せるのを楽しみに待っている、というセリフを、今でも鮮明に思い出せる。

 絵本に出てくる王子様は、白馬に乗ったキラキラした白い服のイメージだけど、私が出会った王子様は、大型のバイクに乗った真っ黒な装いの久我さんだ。

 彼の存在が、いつも私の支えになっている。


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