冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
なんだって!?
すれ違いが起きたのは、私が政略結婚を承諾した後、相手の情報を何ひとつ聞かなかったのが原因だ。
それじゃあ、本当に目の前の久我さんが夫になるの?
めまいがして床に座り込む。膝に肘をついた彼は、若干戸惑いつつ、こちらを窺っていた。
「昨日は、肩書きにしか興味がない迷惑な女性くらいに思っていたんだけど、後から聞き覚えのある名前だと気付いて、結婚相手だと知ったんだ。正直に言うと、結婚そのものに興味がなくて、写真すら見ていなかった。ひどい態度をとって悪かった」
「謝らないでください。それは私も同じです。結婚相手は誰でも一緒だと思っていましたから……それに、昨日声をかけたのは、夫になる人に挨拶をしようとしたわけじゃないので」
「そういえば、結婚相手の情報を詳しく知らなかったんだよな」と理解したらしい久我さんは、余計に昨夜のエレベーターでの出来事が理解できないようだ。