冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
百五十三センチの身長に対して、体重は六十五キロを超えている。もっとも健康でいられる標準の体重からは十五キロ以上かけ離れていた。
子どもの頃からスイーツが大好きだった。いつか自分も人に好きと言ってもらえるお菓子を作りたいと願うようになったのは、小学生の頃だったかもしれない。
その頃、実家に美味しいと有名なスイーツ店や海外の高級チョコレートの差し入れが届くことが多かった。理由は真宮家にある。
父は、医薬品の開発から生産、販売までを行う真宮製薬株式会社の代表取締役社長である。祖父の代から新薬の開発事業に力を入れ、シェア拡大により大手の会社になった。
しかし近年は新薬の開発難易度が上がり、研究費も増加、苦難の状況が続いていると、母が愚痴を言っている。
何もかもが良くない流れになっているように感じた矢先、これだ。
好きだと告白したのは私からで、宇一さんも好きだと言ってくれていたし、それなりに恋人らしい営みもした。
でも、向こうが遊んでいた認識ならば、振られたと呼ぶべきでもないかもしれない。
私は、恋人だと思っていた男性に遊ばれ、夢も職場も失った、寂しい残念女なのである。