冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 椿さんは帰ってからも、パソコンとにらめっこをしているのが多い。

 世界情勢や経済の傾向を調べているときもあれば、外国語の本を読んでいるのも見かける。

 前回日本に帰国した四年前までは、英語と日本語を操るバイリンガルだったらしいが、最近は使われる言語の割合の多く占めてきた中国語やスペイン語も習得したそうだ。たまに、ぶつぶつと唱えたり、字幕の映画を観ている。

 あの人、一体いつ寝ているのかな。ホテルでは昼食くらいしかゆっくり取れないだろうし、帰ってからも息抜きをしている様子がない。

 映画にしろ読書にしろ、全てが仕事と繋がっていて、自分のためだけの時間を過ごしている姿を見たことがなかった。

 そういえば、夜は外食も多いし、朝だってパンと野菜ジュースを飲むくらいだ。

 そんな生活をしていたら、いつか倒れてしまうんじゃ……?


「藍? 水はいいのか?」

「あっ、そうね。椿さんはいる?」

「いや、大丈夫。じゃあ、おやすみ」


< 47 / 202 >

この作品をシェア

pagetop