冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


「全ての要望に応えるって、限度があるわ。私がわがままを言ったら迷惑でしょう?」

「そんなことはない。高級品や豪華な食事をねだられても、悪い気はしないな。言葉通り、夫婦らしい触れ合いでもなんでもする」

「夫婦らしい触れ合い?」

「全部言わせたいのか?」


 長い指が伸びて、首筋を下から上へ撫でられる。

 からかいとは違う、焦らすようで色っぽい手つきに、体の芯が甘く震えた。

 急に、椿さんが男性であると自覚する。意識した途端に胸が鳴りだして落ち着かない。

 もしかして、私がキスしたりそれ以上をねだったりした場合は応えるという宣言なの? 

 言葉の意味を察して頬を熱くさせると、彼は楽しそうに口角を緩く上げた。


「そんな素直に反応するのか。強気でいたさっきまでとは別人だな」

「か、からかうのはやめて。そんなはしたないお願いはしません」

「わかっているよ。冗談だ。掟があるし、見境なく襲うほど飢えてないから安心しろ」


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