冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
不器用な恋心
七月の初旬、仕事始まりの月曜日に、職場のカフェへ椿さんが顔を出した。
今週の土曜日に予定されている、ランコントルホテルでの結婚式について打ち合わせをするためだ。
ランコントルホテルには独立型のチャペルが併設されており、結婚式場としても人気が高い。披露宴に使うバリエーション豊かな会場があるのも理由のひとつだろう。
ウエディングプランのひとつとして、クラブフロアの宿泊付きフェアを開催しているため、椿さんが仕事を任されていると聞いていた。
和洋中折衷料理やウエディングケーキはホテルのシェフが担当するが、コースメニューのデザートをブッフェに変えたいと希望があり、当日のスイーツの発注を依頼されたという経緯である。
実際に働いているのを見るのは二回目だけど、やはり存在感がすごい。真剣な表情で素早く仕事をまわしていくところを見ると、彼の凄さを実感する。
「久我さん。ゲストの規模や新郎新婦のご希望、現在のプランの変更はありませんか?」
「ええ。今まで打ち合わせをした内容で変わりはありません。詰めてきたスケジュール通りに準備を進めてください。カフェで提供されているランコントルホテルのブランドスイーツに期待をしています」