冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
にこやかな顔で、こちらの士気を高めるのが上手い。カフェを総括しているペストリーシェフも相当気合いが入っている。
まさか、一緒に仕事をできるとは思っていなかったわ。ブッフェに出すスイーツを作るのも楽しみだし、それが椿さんのお仕事に繋がるのもワクワクするな。
簡単な打ち合わせが終わり、それぞれがいつもの仕事に取り掛かる。ちょうどお昼どきで、カフェも賑わい始めてきた。
「藍」
彼がクラブフロアへ戻る前、軽く声をかけられる。こうして会えるのはそうそうない機会なので、少し緊張してしまう。
「昼は食べたか?」
「ううん、まだ。椿さんは?」
「俺も会議続きで、すっかり食べ損ねた。この後、二時間くらいは忙しいかもな」
相変わらず多忙で、他の従業員とずらして昼休憩をとっているため、すっかり空腹のピークを越えてから昼食を取ったり、日によっては小腹を満たすパウチタイプのゼリーで済ませたりするそうだ。