私をみつけて離さないで
1.東京から京都へ




東京出身の私が京都の大学を選んだのは、親から、家族から、逃げたい一心だった。
いつも出来損ないと言われていた、姉や兄が優秀過ぎるのだと言いたい。でもそんな言い訳をすれば何倍にも返ってくるから、抵抗するのをやめたのは幼稚園の時だ。

姉兄だけじゃない、友達とも比較された、姉たちはそれに反骨し成長したようだが、私は駄目だった、いつも追い詰められていた。

姉たちが卒業した都内の有名大学へ行く気にはなれず、わざわざ遠く離れた大学を選んだ、しかも名が通ったところでなければ親は許してくれない。私は初めて自分に勝つために必死になって勉強した。
その大学に合格して初めて親にも褒められた、だったら都内にしたらよかったのに、余計なお金が、と言われたが、そんなことよりほっとしたのが先に立った。

もう、東京には戻らない、そう誓って私は京都へやってきた。

その京都の地で、運命の出会いをするなどと、これっぽっちも思っていなかった。
< 1 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop