私をみつけて離さないで
「うーん、でもまあ中華屋さんの前も通ったし、そのへんの推理もあって……でも本当、その程度だけどちょっと人より相手の気持ちは判りやすいかも。これも親からの遺伝でね」
「ええー、そんな力も遺伝するんですか?」
「うちの両親、宇宙人なの」
「は?」

思わず口が開いた、絶対間抜けな顔をしている。え、だって、宇宙人……地球人もだぜともいえるけど……。
ぽかんとしたまま真さんを見ると、真さんは横目で私を見て、いたずら気味に目を光らせて微笑んでる。

ああ、これは地球人も宇宙人の類だな。

「んもう、からかって!」

二の腕を叩いていた、真さんは笑う。

「まあ、そんな話も、また今度ね」

宇宙人の話? これ以上、なにがあるんだろう。

あ、私の心が判るって言うなら、ちょっといたずら仕返しちゃえ。

うーんと──真さん、真さん、好きです、好きです、大好きです……横顔をじっと見つめながら心の中で呟き続けると、真さんは僅かに頬を赤らめて微笑んだ。

「聞こえました!?」
「うん──そういうのは、直接言ってもらった方が嬉しいな」
「しっかり聞こえてるじゃないですか!」

もうやだ、本当に判るんだ! 私、恥ずかしいことばっかり考えていなかっただろうか!?

「言葉としては聞こえてこないよ。なんていうかな、気持ちというか、映像に近いって言うか、だから」

突然真さんは、道のど真ん中で車を停める、道と行っても田舎の小道と言っていい、前後に車はないけれど……!

「ちゃんと言って?」

サイドブレーキまで引いてハンドルにかけた手に頭を乗せて、甘えるような仕草でこちらを見る……ああ、イケメンのこんな姿、ヤバすぎます!

「す……」

声を振り絞ったけれど、やたら掠れてはっきりとしない。真さんにもうん?と聞き返されてしまう。

「好き、で……」

頑張って声を張り上げたのに。真さんは私のシートに手をつくと、体を伸ばすようにして私に体を近づける。その意味は判った、私は目を閉じてしまう、僅かに唇が触れあって離れた。

不意打ち、でも嬉しい。真さんに求められるのは喜びだ。

「僕も大好き」

すぐ目の前で微笑むのが色気がありすぎて、私は欲望に負けずその体に抱き着いていた。

私も好き、その気持ちを思い切り込めて。
いっそのこと、私の心が全部真さんに溶け込んでしまえばいいのにと思った、嘘も偽りもない気持ちだとわかるから。そして真さんならそれができそうで、不思議な感覚にドキドキしてくる。

ああ、私も真さんの心が読めたらいいのに。でも私は鼓膜を揺らす言葉しか判らない、それがこんなにももどかしいなんて。

もっといってほしい、私を好きだって!
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