佐藤さん家のふたりとわたしと。
その夜、LINEが来た。


“うちに来い”


よく送られてくるなんてことない文章。
いつもなら送り返す前にもう家を出てるんだけど。


“今宿題してるから”


また嘘付いちゃった。
今からでも本当にできるけど、終わったら行くねとも言えなくて。

ソファーでゴロゴロしながらLINEを返した。

その直後、電話が掛かって来た。

LINEの送り主じゃない方から。

「もしもし、宿題いつ終わる?」

「まだ全然だよ。大志は終わったの?」

「終わってない!今さ、とーちゃんがプリン買って来てくれたからおいでよ」

「うーん…」

いつもの私ならここですかさず“行く!”と答える。

佐藤さん家に行かない理由なんて今までなかったから。

どんな時だって、用もない時だって、遊びに行ってた。

「来ないの?」

「ううん、行く!」

だからそれを断ることもできなくて。
大志の声を聞いたら嘘をつくのが申し訳ない気持ちになったから。

電話を切ってすぐに出かけた。
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