佐藤さん家のふたりとわたしと。
話は戻って今、高校1年の冬。

「芽衣、めぇーい!芽衣ってば!!」

2限目が終わった学校の教室、席についたまま肘をついて一点を見つめ微動だにしない芽衣は俺が呼んでることに全く気付かない。俺が芽衣の前に立ってることさえも気付いてない。 

「えっ、ごめん!何だっけ!?」

「…最近ずーっとぼーっとしてない?何かあった?」

首をかしげる俺にブンブンと芽衣は首を振った。

「そんなことないよ、夕飯何にしようって考えてた!何がいいと思う?」

最近、様子が変だ。

登校時は優志とばっか話して、下校時は1人で帰ろうとしたり、行動が不自然だ。

それに何より変なのはうちに来ることが減ったこと。

生まれた時からお隣さんの芽衣は自分の家のように馴染んで、気付いたらうちにいるのがあたりまえだったのに。

「今日怜くんは?夜いるの?」

「たぶんいないかなー、バイトだったと思う」

「じゃあうち来れば?うちで食べればいいじゃん」

少しだけ、遅れて芽衣が言う。
次の言葉に迷ったみたいに作り笑いをする。その顔はいったい何なんだ。

「…でもお世話になってばっかりもね」

「芽衣がうちにいるのなんて普通じゃない?」

なんで困った顔するんだ。

「…じゃあ行こうかな」

眉をハの字にして笑うなんて芽衣らしくない。どうしてそんな顔するんだよ。
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