佐藤さん家のふたりとわたしと。
「「…………。」」

俺も奏志もその背中をなんとなく追っていた。

バタンっとドアが閉まり終わるまで、なぜか目が離せなかった。

誰も覗いていない双眼鏡、しゃがんで星を見る。

「…星なんて久しぶりに見たな」

「…そーだな」

奏志と2人で並んで、座って。

「七夕の日は見たりしてたけど、天の川がどれかもよくわかんなかったもん」

「全員バカだからな。星座とか知りもしねぇ」

ふわぁっと奏志があくびをした。

「…奏志」

「ん?」

「芽衣になんか言った?」

「は?」

「ここ最近芽衣が変だなって思ってたから…」

考えられるのなんて1つしかなかった。

そう、だって俺と奏志。

どんな時だって通じ合う、嫌なことだって。

「どーせわかってんだろ?わかってんなら聞く必要ねーだろ」

「そーだけど…っ」

奏志がゆっくり立ち上がる。

「なんで芽衣にあんなことしたの?」

「あんなことってなんだよ」

俺も同じように立ち上がった。

「無理矢理キスっ、してた…よな?」

「は!?見てたのかよっ、趣味悪りぃーな!つーかしてねぇし!」

あの時、部屋から出てく芽衣の顔が忘れられない。泣きそうな潤んだ瞳をしていた。

「してないにしてもしようとはしてただろ!?」

「だったらなんだよ!?」

「芽衣の気持ち考えないであんなことするのはどーかと思うけど!」

「それは俺と芽衣の問題でお前には関係ねぇーだろ!」

「関係ないって…っ」

どんどん荒ぶっていく声、怒号が空中に鳴り響く。

しょっしゅう言い争ってはいるけど、こんな風に感情をぶつけ合うのは久しぶり…いや初めてだったかもしれない。

「つーかそれ自分が言えないだけじゃねぇーの!?それで俺に言ってくるなんて見当違いだな!」

「はぁ、なんだと?」

頭に血が上ってガッと奏志の胸ぐら掴んだ。

「やんのか?」

熱の入った瞳がぶつかり合う、一度入ったスイッチは発火目前。

掴んだ右手にグッと力が入った。

もうお互いに止められなくて、寒い星空の下、揉み合いの末ぐっちゃぐちゃだ。
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