佐藤さん家のふたりとわたしと。
すーっと体が戻って来るような感覚、静かに目を開けた。

まだ重たい気がする瞼を支えるように目を開け、ゆっくり辺りを確認する。

「……?」

どこ?

天井は…えっと、何ここ?

今いるのはふとんの中、でも家じゃない。

見たことのない景色に軽く薬品の匂いがする。

ん、ここって…

もしかして保健室??

目をぱちくりさせる私を覗き込むように見つめる大志と奏志と目が合った。

「「先生、起きた!」」

先生ってことはまだ学校だ。やっぱここは保健室だ。

着慣れないふとんの中で、私いつの間にここで寝ちゃったんだろう。

全然記憶がない。

ただ少し体が痛い。

不思議に思いながら、のそっと起き上がった。

「あら、もう大丈夫?」

声を掛けたのは保健の先生。

「はい…、だいぶ」

まだぼーっとする頭を抱え、ひとつひとつ思い返していた。

日直日誌書いてたまで記憶はあるんだけど、そのあとどうしたんだっけ?2人がサッカーしに行くとかで、あれ?日直日誌ってどうなったんだっけ?

「日向野さん、もしかして今日熱あった?」

「え、熱…測ってないんでわからないです」

「そう、寒くなって来たからね。ちゃんと温かくしないと」

「はい…」

怒られちゃった。怒られてるわけじゃないかもしれないけどそう聞こえた。

ふとんをきゅっと掴んだ。

風邪っぽいとは思ってたけど、熱を測ったら風邪と認めなくちゃいけない気がしてわざと測らなかった。やっちゃったな、失敗しちゃった。

そう思いながらふと外を見ると窓の外は真っ暗だった。

「えっ、暗っ!」

それには思わず声が出ちゃうほどビックリした。

「本当だよ、どんだけ寝るんだよ」

ベッドの上に腰掛ける奏志。

「全然起きねーんだもん」

その隣でベッドに頬杖をつきながら丸椅子に座る大志。

「え、今何時…?」

「「7時!」」

「3時間も寝てたんだ!」

確か最後に時計を見たのは4時前だった。ざっと計算しても3時間も経ってる。長い間記憶がない感じはしてたけど、3時間って…昼寝もいいとこだよ!

「あれサッカーは!?」

ギュンッと視線を2人の方に戻した。

「もう終わったわ」

「もう下校時間だしね」

「そっか、そうだよね…」

下校時間ギリギリ…、さすがにそんなずっとサッカーしてないよね?いや、2人ならありえるかな?

私が寝てる間…

「ふふっ」

保健の先生の笑い声が聞こえた。

「?」

「ずっとここで待ってたわよねぇ、サッカー途中で抜けて来てねぇ」

「「!?」」

少しだけ2人の頬が赤くなったのがわかった。

「倒れたなんて聞いたら心配しちゃうもんね」

「「そんな…っ!」」

「サッカーなんてほとんどしてないでしょ?」

そう言い残し、保健の先生が出ていった。担任を呼んでくるからって。

2人はなんだかバツが悪そう。

黙ったまんま、互いに視線は違うとこを見てる。

そっか、長い間記憶がないのはそのせいか。

そっか…

「…ずっと一緒にいてくれたんだ」

「「別に…っ」」

その姿を見てなんだか安心してしまった。

私が起きるまで待っててくれたんだよね。
起こさないように、ずっとそばで。

「ありがとう」

「…おぅ」

「うん」

一気に元気になっちゃった気がした。
< 13 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop