佐藤さん家のふたりとわたしと。
「あのね、前に“ちゃんと答えが出たら聞かせて”って言ったじゃん?その答え、言ってもいい?」

「…おう」

ドキドキ鳴る心臓のせいで声が震えそうになる。

何度も呼吸をし直して、グッと握った手に力を入れる。

なかなか言い出せない私の隣で奏志は静かに待ってくれていた。

「私…奏志のこと、大切だよすっごく。寂しい夜に会いに来てくれたり、励ましてくれたり、口はちょっと悪いけど本当は優しいし、いいとこいっぱい知ってる!」

「………。」

「…だから、好きって言ってくれてビックリしたけど嬉しかった」

冷たい空気が頬に刺さる。

上手く言葉に出来てるかな。

「だけど…、奏志とは付き合えない」

ずっと一緒だった。
これからも一緒にいたかった。

「ごめんね…、私…っ」


私の小さな頃からのたったひとつの願いだった。


「好きな人いるから…っ」


秘密を今打ち明けるから。

だって奏志も私の大切な人だもん。


「…ばーか、知ってるわ」

「…え?」

「何年一緒にいると思ってんだよ」

少しだけ前を歩いていた奏志が立ち止まり振り返った。

「…大志だろ?」

「なっ、なんで知って!?」

「見てたらわかるわ。お前わかりやすいし」

「嘘だっ、そんな顔に出したこと…っ」

「見てたらわかる、ずっと見て来たんだから…芽衣のこと」

ちょっとだけ奏志が笑った。

その顔に私が泣きそうになった。

また奏志が前を向いて歩き出した。

「なんであいつなわけ?ぜってぇ俺の方がいい男だろ!」

「う…っ、なんて答えたらいいかわかんない」

「もったいねぇーなぁ!」

すっかり暗くなった帰り道、もうすぐ家に着く。

まだ止まない心臓の音と、重くのしかかる寂しさ。

寂しいなんて、私が言えることじゃないのに。

「じゃあ…、また明日な!」

「う、ん…また、あしたっ」

「なんだよそれ!歯切れ悪りぃ!」

ははっと笑った、その顔は私の知ってるいつもの奏志だった。

「だってまた明日って久しぶりに聞いたから…っ」

単なる挨拶だったのに、奏志の口から聞いたのがいつ振りかってぐらいでちょっと戸惑ってしまった。

「それはお前が避けてたからだろーが!」

「ごめんてばっ」

「…また明日も会うだろ?」

そっか…、そうだった。

ずっと私が勝手に距離を置いていただけで奏志は変わらないで私に接してくれていた。

どこまでもわかってないんだな、私は。

「うん!会う!また明日ね!!」

ばいばいと手を振って別れた。


ずっと一緒にいたいなんて子供じみた夢だったけど、本当にそうだったらいいのにって何度も願った。

2人の真ん中にいるのが居心地よすぎてどこへも行きたくなかった。

だから…



これからも大切なことには変わりないよ。

私の大切なヒーローはずっと2人だよ。

永遠に。


なんてまた笑われちゃうのかな?

ばーかって、笑って。



でも、本当だよ。
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