佐藤さん家のふたりとわたしと。
ある日の休日、ピンポーンと突然チャイムが鳴った。リビングでゴロゴロしていた体を起こして玄関のドアを開ける。

「あ、大志!」

「よっ、遊びに来た!」

「遊ぼ遊ぼ!…あれ奏志は?」

大志の後ろを見るもその姿はなくて、だいたい2人で来るのがマストだったのに。

「誘ったんだけど行かないってさ」

「…そーなんだ」

今度は私が避けられたりしてるのかな。

「…来てほしかった?」

「う、ううん!どっちでもいいよ!」

ちょっとだけ寂しい、なんて言っちゃいけない。それもちゃんと受け止めないと。

「…DVD持って来たんだ!シンデレラ!」

「それ見たがってたよね」

リビングのソファーに並んで座ってDVDを再生する。家にあった賞味期限ギリギリのポテトチップスを食べながら見ることにした。

「変身シーンめっちゃキレイ…!」

ついつい抱きしめたクッションをぎゅ~ってしたくなるほど気分が上がった。

「映像美だよね」

「ドレスっていいなぁ、可愛い~♡」

「芽衣も着たいの?」

「着たい!!でも今奏志のお前には似合わねぇよの声が聞こえたけど」

ポテトチップスに手を伸ばす。パキッと音をさせながら食べた。

「だってほら奏志この女優さんのことめっちゃ可愛いって言ってたじゃん、絶対比べられてバカにされるんだ!」

「…そっかな」

「そーだよ、この人のこと好きって言ってたもん」

もう1枚ポテトチップスを食べようと、手に取る。

「芽衣も似合うと思うけど」

「……え」

「って、奏志も本当は思ってると思うけどね」 

「…そっかな」

「俺が言うんだからそうだよ」

「そっか…」

それってどうゆう意味なんだろう?なんで奏志のことを大志が言うの?

「「…………。」」

なんとなく2人とも黙ってしまった。

手に取ったポテトチップスを小さくかじった。

大志は気付いてるのかな。
だから、フォローするみたいに言ったのかな。

たぶんまだ私と奏志が気まずいと思ってるから。

ぱくっと残りのポテトチップスを飲み込んだ。
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