佐藤さん家のふたりとわたしと。
少し寝たせいもあってか、さっきより体は軽くなった。

結局熱はあったかもしれないけど、保健室で計ったらいつも通りだったから。
これなら歩いて帰れそうと、そのまま下駄箱にやって来た。

私が上履きから靴に替えている後ろで何やら勝負が行われている。

「「じゃんけんっぽ!!」」

「やりぃ、俺の勝ち!」

奏志が右手を高く上げ、ガッツポーズした。

「…、しょーがねぇ」

おもむろに大志のリュックを奏志が持つ。
今度は何をするのかの思えば、私に背を向けて大志がしゃがみ込んだ。

「はい、芽衣」

「??」

その行動の意味が一瞬理解できなかった。

「え、何?」

「かばんは俺が持ってやるから」

私の肩にかかっていたスクールバッグを奏志が自分の肩にかけた。

「で、芽衣はこいつが持ってくから」

そう言って、大志の方を指差した。

「人を物みたいに!」

そこで気付いた。

おんぶしてくれるってこと!?

「いいよっ、歩けるし!」

「怜くんに電話したらバイト終わるまで無理って言うし、運んでやるから」

「俺がな、運ぶの俺な」

見回りの先生がどんどん鍵をかけ、電気を消していく。たぶん私たちが最後までいる生徒。

だからと言って、はい!お願いします!

なんてしてもらうわけにもいかないでしょ!!

「いいってば、恥ずかしいし!」

「今更俺らの中に恥ずかしいとかねーだろ!」

ぐいぐいと奏志が背中を押してくる。

「そうそう、もう何もない!」

大志もどんと来いと言わんばかりにスタンバイ整ってる。

「あるよ!」

だからと言って、そんな背中を見せられても…っ

「つーか俺ら怒ってるんだけど!」

「うっ、それはごめん。遅くまで待たせちゃって…っ」

あ、やばい奏志が怒り始める。

早く帰るようにしなきゃっ。

「そこじゃないよ!怒ってるのはそこじゃない」

全然私が動かないから、しびれを切らした大志が立ち上がってこっちを見た。

「え、じゃあなんで?何に怒ってんの?」

奏志と2人、じっと私を見て。

「「なんで体調悪いの言わなかった??」」


こうゆう時も2人はハモっちゃうんだ。


今度は私がバツの悪い顔をすることになっちゃった。えへって笑って誤魔化そうと思った。

「あー、…大したことないって…思ってたから」

「大したことないってお前なっ」

「昨日ちょっとコタツで寝ちゃったのがあれかなって」

「大したことなくても言ってよ、言っていいんだから」


「「なんのために俺らいるわけ?」」


そっか、そうだった。

そうだったね、私にはいつも2人がいたんだ。

だからずっと笑っていられたんだった。

「うん…、ごめん。ありがとう」


寂しい1人の夜に会いに来てくれたり、助けを呼んだらすぐに現れて、手を差し伸べてくれる。 

私が辛いとか悲しいとか、そんなこと思う間もなくやってくるの。



ね、ヒーローみたいでしょ?



生まれた時からずっといるんだ。

そんなヒーローが、2人も。



「早く帰んぞ!」

「うん!」

「あ、じゃあ…」

「それは本当いい!歩けるから!」


私の大切なヒーローたち。
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